私は趣味でマンドリンを弾きます。
地域のマンドリン合奏団で合奏したり、家で弾いたり、またいろんな曲をマンドリン演奏用に耳コピーしたり編曲したりもします。
そんなとき楽譜をマンドリンの音色で電子的に鳴らせることができればとても便利です。
すぐさま思いつくのは楽譜作成ソフトを使うことです。
楽譜作成ソフトは
・作曲、編曲をしてスコア、パート譜を作りたい場合
・MIDIファイルを楽譜に変換したい場合、またはその逆
・スキャナで読み取った印刷譜を編集したい場合
・作成した楽譜をいろんな楽器で演奏させたい場合
などに大変重宝なソフトで、使い慣れるまでは大変ですが使ってみるともう手放せません。
楽譜作成ソフトは楽譜の作成はもちろんのこと、私は作成した楽譜をマンドリンはじめギター、ヴァイオリン、ピアノなどいろんな楽器やボーカルで演奏させる音源として大いに利用しています。
・合奏音源ではマイナスワン的に自分の弾くパートを抜いた音源を作ってそれを再
生しながらそのパートを弾くことで合奏が楽しめる
・マンドリンとギターやマンドリンとピアノの二重奏ではギターやピアノの奏者が
傍にいなくてもギターやピアノの音源を作ってそれを再生しながらマンドリンを
弾けば一人で二重奏ができる
・編曲では編曲した部分を指定した楽器の音色ですぐその場で再生してみることで
チェックや修整が何度でも簡単に行える
楽譜作成ソフトで演奏させる電子合奏は
・指示したとおり忠実に演奏し決して間違ったりしません
・弦がゆるんで調弦が必要ということもありません
・繰り返し何度弾かせても疲れたなどと不平を言いません
・どんなに速くて難しい箇所でもなんの苦もなく正確に弾きこなします
良いことずくめのようですが反面
・指示されたことしかできずまったく融通が利きません
・細やかな表現を求めようとするほど指示がとんでもなく大変
・マンドリン用の良い音源がなかなか見つかりません
など演奏音源としてこれで完璧ということは決してありません。
楽譜作成ソフトにはフリーソフトもありますが、数種類の製品が販売されています。
中でもスコアメーカーとFinaleが二大楽譜作成ソフトとしてよく知られています。
それぞれいろんなラインナップがあります。
私はスコアメーカーの当時の最上位製品8Proをメインに、併せて無料版のFinale NotePad 2012Jも使用しています。
スコアメーカー8Proは高額な商品でありながら中に入っているマンドリン音源の音色はまったく貧弱でProとは名ばかり、まるで使い物になりません。
一方Finale NotePad 2012Jのマンドリン音源もやはり音質は満足のゆくものではなく、しかもピッキング音のみでトレモロ音はありません。
有料版Finaleには高品質なGarritan(ガーリタン)音源が付属し、その中にマンドリン音源もあるようですが、有料版Finaleの体験版は2020年10月現在提供が中止されていますので音を確認することができません。
これらソフトのピアノやヴァイオリン音源は申し分ない音色であるのに対してマンドリンはひどい差別待遇で、マンドリンがいかにマイナーな楽器であるかということを思い知らされます。
さらに音源としてヴァイオリンの場合はヴィオラやチェロといったヴァイオリン属の楽器の音色がちゃんと揃えられているのに対してマンドリンオーケストラに欠かせないマンドラやマンドロンチェロ(マンドセロ)のようなマンドリン属の楽器の音源はまったくありません。
これではいくらソフトでマンドリンオーケストラのスコアを作成してみてもオーケストラとして演奏させることができません。
楽譜作成ソフトメーカーは譜面作成機能向上にばかり力を入れて演奏機能はほんのおまけついで程度にしか考えていないのではないかと思ってしまいます。
これは楽譜作成ソフトの重大な欠陥だと考えます。
電子マンドリン楽団実現の前に立ちはだかるいろんな問題点が見えてきました。
・マンドリンのいい音源を楽譜作成ソフト以外に見つけることができるか
・楽譜作成ソフトで作成した楽譜をこれら外部音源で演奏させるにはどうすればよ
いか
・マンドラやマンドセロの音源をどうするか
・楽譜上のトレモロとピッキングの使い分けを音源にどう指示するか
など、どれもこれも難題だらけで途方に暮れてしまいます。
しかし何としても電子マンドリン楽団を実現させたいという強い執念で一つ一つ解決に向けて取り組んできました。
これらのことを解決しようとする場合PCで音楽を作るDTM(Desktop Music、和製英語)のこと、そしてそのDTMを実現するための音楽編集ソフトDAW(Digital Audio Workstation)の分野にどうしても足を踏み入れざるを得ません。
楽譜作成ソフトもDAWの一つと考えて良いかと思います。
ところがDTMに一歩踏み込めばVST、sfz、サンプラー、シーケンサー、バンクやパッチなどと訳のわからない言葉がどんどん目に飛び込んできます。
例えば速度を表す「ベロシティ」なんて用語はDTMの世界では速度ではなく「音量」を意味します。
また「VST」とは「ソフトウェア・シンセサイザーやエフェクター・プラグインと波形編集ソフトウェアやDAW間のリアルタイムなデータ受け渡しを担い各種の加工などを施すプログラムをプラグインとして提供するための標準的な規格の一つ」と解説されますが初めて読むと何のことやらさっぱりわかりません。
解説の解説が必要になります。
DTM/DAWは私のような門外漢にとっては恐ろしく敷居が高く、解説を読んでもちょっとやそっとでは理解できません。
以下の内容は小生のブログ「QAZのつれづれ日記」の下記記事を編集してまとめた電子マンドリン楽団QAZ実現に向けての奮闘記であり備忘録です。
初めにお断りですが、現在まだ完全なQAZ楽団実現の道半ばであり完成には至っておりません。
今後さらに検討を重ね本稿に加筆修正を加えて完成に近づけてゆければと考えています。
ただ本内容が実現に向けての唯一最適な方法とは考えていませんし間違った知識で進めている部分があるやも知れません。
ぜひ識者の方々のご指摘をいただければ幸甚です。
[ブログ記事]
・MIDI音源とマンドリン(2011.07.01)
・マンドリンのMIDI音源(2011.07.05)
・スコアメーカーでマンドリンの音色で合奏させる方法(2011.07.11)
・MIDIマッパー(2011.07.19)
・複数のサウンドフォントを一つにまとめる方法(2012.08.06)
・楽譜作成ソフトと電子マンドリン合奏団(2012.10.13)
・楽譜をマンドリンの音色で鳴らす(2017.12.21)
・Win10でのステレオミキサーとMIDIマッパー(2020.05.02)
楽譜作成ソフトのマンドリンの音が貧弱で使い物にならないということがわかりました。
ネットを閲覧していて「マンドリンの音色で鳴らせてみました」と言われる曲も実際聞いてみますとその音色はほとんど本来のマンドリンの音色、感触からはほど遠いのです。
ところでPCにインストールした楽譜作成ソフトのマンドリン音源はどこにあって、どういう仕組みで鳴っているのでしょうか。
スコアメーカーは音源ファイルの所在を明らかにしていません。
一方Finaleの音源はsynthgms.sf2という見慣れない拡張子のついたファイルで、サウンドフォントと呼ばれます。
このファイルの中にマンドリンをはじめいっさいがっさいの楽器の音色が収められています。
ただしこのsf2ファイルは直接クリックしても開いて中を見ることはできません。
音源の正体を知ろうとするとMIDI(Musical Instrument Digital Interface)について最低限の知識が必要になります。
MIDIは電子化された楽譜演奏情報の世界共通規格でファイルの拡張子は.midです。
ネットには拡張子.midの MIDI楽曲が溢れていますので好きな曲をPCに取り込んで聞くことができます。
楽譜作成ソフトの場合は楽譜を作成しますとその情報がソフトで自動的にMIDIファイル化されます。
MIDI自体には音源もプレイヤーも備わっていません。
ネットのMIDI曲やPCに保存してあるMIDI曲を聴く場合はPC内蔵のMSGS(Microsoft GS Wavetable Synth)を音源として、一方楽譜作成ソフトの場合は楽譜作成ソフト自身が持っている音源を使用して、いずれもPC内蔵のプレイヤーソフトWMP(Windows Media Player)を作動させスピーカーから音を出して聴くことになります。
もちろんネットからPCに取り込んだMIDI曲でもこれを楽譜作成ソフトに取り込めば楽譜作成ソフトが持っている音源で鳴らすことができますし、逆に楽譜作成ソフトで作成した曲を音源を切り替えてMSGSで鳴らすこともできるようになっています。
余談ですがMIDIだけでなくmp3ファイルやCDもWMPで鳴らしています。
MIDIは楽器ごとに情報の分かれた多チャンネルのデジタルデータであるのに対してmp3やCDは楽器ごとに情報が分離していない1チャンネルのデジタルデータです。
MIDIはソフトでmp3に変換できます。
その逆にmp3やCDからMIDIへの変換ができれば楽譜作成ソフトの機能を使ってmp3やCD曲を楽譜に変換できるのですが、複数の楽器で演奏されたmp3やCD楽曲をMIDIに変換しても元々楽器ごとの情報がありませんので1つの楽器で演奏したごちゃまぜのデータとしか認識されないためMIDIへの変換は原理的に無理となります。
話を戻して、音源を考えるときソフト/ハード音源、ソフト/ハードシンセ、デジタル/アナログ音源、デジタル/アナログシンセ、と似通った言葉が出てきて相当頭が混乱します。
これらの言葉は使っている人によって少しづつ解釈が違っていたり時代の進化に伴って意味合いが変わってきているようでよけい始末が悪いです。
シンセサイザ(シンセ)は電子的に音を合成して楽音を作り出す電子楽器でありシンセサイザ音源、あるいは単に音源と言われたりもします。
ソフト/ハードシンセはシンセを実装面から見た表現であり、デジタル/アナログシンセは電子音の作り方から見た表現と考えれば少しはわかりやすいかも知れません。
ソフト音源・ソフトシンセはPCにインストールされたソフトによって音を生成する音源でキーボードはPCに表示させて使うか外付けして用います。
ハード音源・ハードシンセはPCとは別の独立した筐体で音を生成する音源でキーボード一体型が多く見られます。
デジタル音源・デジタルシンセは本物の楽器のアナログ波形音をPCM(Pulse Code Modulation)でサンプリング(標本化)しDSP(Digital Signal Processor)チップでデジタル信号処理し音を合成して楽音にします。
アナログ音源・アナログシンセは電子部品によるアナログ回路で発振させた音をフィルタ加工して楽音にします。
デジタルシンセにはハードシンセ、ソフトシンセの両方ありますがアナログシンセにはハードシンセだけでソフトシンセはありません。
シンセの分類は本当はもっと細分化されていて中身は非常に複雑ですが、わかりやすさを優先してエッセンスだけを取り出して簡略化して述べていますので上記説明には厳密性、正確性を欠く部分があるかも知れません。
これらの分類から楽譜作成ソフトの音源はデジタルシンセでありソフトシンセであることがわかります。
楽譜作成ソフトの音源であるサウンドフォント、sf2ファイルの中身は実はWAVファイル(拡張子は.wav)です。
ただしsf2ファイルをクリックすればWAVが見えるといったものではありません。
WAVはアナログ波形を圧縮をかけないリニアPCMでサンプリングしたデジタルデータです。
サウンドフォント作成フリーソフトVienaなどを使ってWAVファイルからsf2形式のサウンドフォントを作成することができます。
MIDIは音源としてWAVファイルではなくsf2ファイルを呼び出します。
Viena でWAVからsf2ファイルを作るにはViena にWAVを流し込んだあと音量やピッチの微調、長音符に対応すべくループの設定などいろんな処理が必要になります。
Vienaは数少ない優れたサウンドフォント作成ソフトの一つですが使い方に関しての情報が少なく、ソフト付属の説明書(英文)を読んだくらいでは使うのが恐ろしく難しく、私にはまだまだこのソフトの1/10も十分に使いこなせていません。
自分で弾いたマンドリンの音をマイクで録音しPCに取り込んでWAVファイルにすることは簡単にできますので、トレモロとピッキングでマンドリンの音階を一音一音弾いてそれぞれWAVにしそれをVienaでsf2にして自前のサウンドフォントを作成しておけば楽譜作成ソフトで作成したマンドリン曲を自分の楽器の音色で弾かせることが可能になります。
もっとも元々下手なトレモロでは下手な演奏しかしてくれませんし、質の良い音源にするには良い楽器、録音に適した音響環境、良質な録音機材等が必要になることでしょう。
Viena64の最新バージョンは2020年10月現在Ver.1.161となっています。
以上をまとめて音源から音が出るまでのフローを概念的に図で示せば次のようになるかと思います。
私のパソコン内蔵の音源には元々インストールされているMSGSとあとからインストールした楽譜作成ソフトのスコアメーカー8ProおよびFinale NotePad 2012Jの合わせて3つの音源があります。
これら音源の中のマンドリン音については
・MSGS→ピッキング音しかありません
・スコアメーカー8Pro→ピッキング音、トレモロ音の両方あります
・Finale NotePad 2012J→ピッキング音しかありません
MSGSにマンドリン音があるかどうかを確かめるには楽譜作成ソフトで音源にMSGSを選択してから音色マップを表示させマンドリンがあるかどうかを確認し、その上で実際に音を鳴らせてみればわかります。
マンドリン音源としてピッキング音だけでは話になりませんし、トレモロ音があっても音が良くないのではこれまた使い物になりません。
従って外部に良いマンドリン音源がないか探してみます。
ネット上にはいろんな楽器のサウンドフォントが有料、無料いろいろ山のようにあります。
ただマンドリン音源については数が非常に少なく、有料のものでサンプル音があってもトレモロ音を納得ゆくまで事前確認するにはどれも不十分です。
従って有料のものの中に質の良いマンドリン音源があるかどうかなかなか探し当てることができません。
一方無料のものは音を確かめることはできても総じて音はチープです。
そんな中にあって無料で使えて音質が良く、しかもトレモロ音とピッキング音の両方そろった素晴らしいマンドリン音源がありました。
現在のところこれ以上音質の優れたマンドリン音源は見つかりません。
「楽曲への使用は自由ですが、データそのもの、もしくは改変したデータを再配布することを禁止いたします。」と記されています。
ご本人の了解を得て有難く使わせていただくことに致しました。
トレモロ音源は容量62.9MBのZIPファイルで、解凍するとWsp Mandolin Tremolo.sf2というサウンドフォントになります。
ピッキング音源は容量10.7MBのZIPファイルで、解凍するとWsp Mandolin Picking.sf2というサウンドフォントになります。
マンドラやマンドセロの音源はネットを探してもまったく見つけることができません。
楽譜作成ソフトの音質の良くないマンドリン音源に代えてPC外部から質の良い音源をPCに取り込んで鳴らす方法を考えます。
外部のサウンドフォント音源をPCに取り込むにはMIDIドライバーが必要になります。
また音源の内部/外部切り替えスイッチの働きをするMIDIマッパーはWin10にはついていないためこれも必要です。
MIDIドライバーにはVirtual MIDI SynthやTimidityなどが良く知られています。
Timidityは自身でMSGS音源より良質なサウンドフォントを有しMIDIプレイヤーとしても動作する優れたドライバーソフトですがどうもスコアメーカーとの相性が悪く、CoolSoft社のフリーソフトVirtual MIDI Synthをインストールすることにしました。
MIDIマッパーも同じCoolSoft社のフリーソフトMIDI Mapperをインストールします。
CoolSoft MIDI MapperでVirtual MIDI Synthを選択します。
Virtual MIDI SynthでもVirtual MIDI Synthを選択します。
スコアメーカー8Proで再生デバイスとしてVirtual MIDI Synthを選択します。
Kawai GM2 SW Synthはスコアメーカー8Pro独自音源です。
Finale NotePad 2012JでもVirtual MIDI Synthを選択します。
SmartMusicソフトシンセはFinale NotePad 2012J独自音源です。
これでVirtual MIDI Synthに拡張子.sf2の任意のサウンドフォントを入れておけば、PCのMIDIはすべてこの外部音源で鳴らすことができるようになります。
ではとばかり、Virtual MIDI Synthに前述のWsp Mandolin Tremolo.sf2音源とWsp Mandolin Picking.sf2音源を入れて楽譜作成ソフトで作成した楽譜を鳴らそうとしましたがなぜか全く鳴ってくれません。
それもそのはず、音色マップ(トーンマップ、音源マップ)のことを考えていなかったからで、このことを理解し解決するのに相当の時間を要しました。
sf2ファイルは一つだけの楽器の音源である場合もあり、多数の楽器の集合体の音源である場合もあります。
楽器の音色はそれぞれsf2ファイルの中のあらかじめ決められた場所に収められていて、例えばグランドピアノは通常バンクの先頭1(0と数える場合もあり)、パッチ001の場所と決まっています。
バンクは丁目、パッチ(プリセット、プログラム)は番地と考えればわかりやすいと思います。
バンクはパッチの上位カテゴリーに位置付けらます。
グランドピアノの住所は1丁目1番地というわけです。
sf2音源ファイルは1つ、あるいは2つ以上の多数の楽器の音色の団地みたいなもので、それぞれの楽器はすべてマップのごとくバンクとパッチに紐づけられています。
MIDIファイルは音源ファイルから指定された住所にある楽器を取り出しプレイヤーに渡して音を出します。
MIDIファイルは楽器そのものを直接指定しているわけではなく住所を指定するだけでその住所にどんな楽器があるかはまったく関知していません。
どの住所にどんな楽器を収納するかは音源ファイルの役目です。
sf2ファイルは音源ファイルですが単に楽器の音色情報だけでなく、その楽器の住所情報をも持っていることになります。
パッチは1から128 (あるいは0から127と数える場合もあり) までの番号が割り振られています。
これだけですと最大128種類の楽器しか収納できませんのでパッチの上位にバンクが設けられています。
バンクが1~Nまであれば楽器は最大128×N種類収納できることになります。
スコアメーカー8Proではカワイ独自のKawai GM2 SW Synth音源は河合オリジナルサウンドと呼ばれバンクは1~49まであり、マンドリン音源は次のところに収められています。
・バンク04、パッチ26:メロウマンドリン(ピッキング)
・バンク10、パッチ26:マンドリン2(ピッキング)
・バンク17、パッチ26:EXPマンドリン(トレモロ/ピッキング切り替え)
・バンク18、パッチ26:Expマンドリン2(ピッキング)
・バンク19、パッチ26:トレモロマンドリン
メロウとは角が取れた豊かな音色、EXPとは演奏強度によって音色の変化が大きい音色を意味するのだそうです。
しかしこれらの音色の違いやトレモロとピッキングの切り替え法についてリファレンスマニュアルや別売の高価な公式活用ガイドにもいっさい記載がありません。
こちらからメーカーに問い合わせてやっと判明するありさまです。
トレモロとピッキングの切り替えに至っては強弱記号を兼用するそうで、これでは強弱記号を本来の音符の強弱に用いるか奏法の切り替えに用いるかを区別するための余計な指示も必要になりますからこんな用法は話になりません。
Finale NotePad 2012Jではフィナーレ独自の音源はSmart Musicシンセと呼ばれバンク(GM2 Variation)は1~9まであり、マンドリンはGM2 Variation2、パッチ26(ピッキングのみ)に収められています。
前記マンドリン音源Wsp Mandolin Tremolo.sf2はスコアメーカーの音色マップではサウンドセット音源のバンク0、パッチ3、元々エレクトリックグランドピアノがあった場所に上書きして割り当てられていました。
音源としてエレクトリックグランドピアノを使わないのであればこの設定のままでも良いのですが、全く使う予定のない楽器の場所に割り当てておくことができればベストです。
そのためには音源を自在に別の番地に移し替えできることが必要です。
その方法はいろいろあると思いますが私は前述のVienaを使用しました。
私はパッチ番号の最後の3つ、126~128を
126:ヘリコプター→マンドリン(トレモロ)
127:拍手→マンドリン(ピッキング)
128:銃声→ナイロン弦ギター(ネットで探した音質の良いもの)
に差し替えて割り当てておきました。
Wsp Mandolin Tremolo.sf2音源とWsp Mandolin Picking.sf2音源を使って楽譜作成ソフトで作成した楽譜を鳴らす場合、この二つの音源はそれぞれ独立した楽器として扱うことになり、マンドリンパートをトレモロパート譜とピッキングパート譜に分けて記譜する必要があります。
長い曲になればこれはかなり面倒な作業で労力を要します。
Wsp Mandolin Tremolo.sf2音源とWsp Mandolin Picking.sf2音源はマンドリンの音域だけでなくマンドラ、マンドセロの音域まで伸びていますのでマンドラ、マンドセロの音源としても使えそうで、もちろんこの場合もそれぞれトレモロパート譜とピッキングパート譜が必要になります。
しかしマンドリン音源を無理にマンドラ、マンドセロの音源とて使用した場合音が不自然になる場合があります。
原因を詳しく調べたわけではありませんし調べる方法もよくわかりませんが原因の一つに倍音の出かたが実際のマンドラ、マンドセロとは異なるためではないかと推測します。
世の中にマンドラ、マンドセロの音源がない以上やはりマンドラ、マンドセロについては今のところ生の楽器の音からサウンドフォントを自作するしかないのかも知れません。
また、マンドリン音源を用いる場合各音階の音量に不均衡が生じないよう予め各音階ごとの音源の音量を揃える調整をして使用していますが、マンドリン、マンドラ、マンドセロで合奏させますと特定の小節のあるパートの音が聞こえにくくなってしまう現象の起きることがあります。
これも原因が良くわかりませんので推測するしかありませんが、各パートの波形の位相がある時点で逆位相で合ってしまい音が弱まることがあるのかも知れません。
この場合その部分だけ強制的にフォルテッシモにして音量を調整して個々に修整するしかありません。
楽譜作成ソフトで合奏させる場合、どのパートも一人づつで弾いた結果となります。
波形の位相や倍音の出方の異なる複数の楽器を合成した音源があればこういった現象を軽減できることになるのかも知れません。
楽譜作成ソフトのスコアメーカーには一部ですが例えばストリングスの音色の種類の中にヴァイオリンアンサンブルなど複数の同種楽器の集合体の音色が備わっています。
最後に今までに電子マンドリン合奏させた編曲作品等のいくつかをご紹介して締めくくりたいと思います。
まだまだ満足ゆく形には仕上がっていませんが、現状ではこれが精一杯といったところです。
マンドリンソロ用に編曲した「早春賦」です。
Carlo Munier作曲「Bolero Andaluso」、マンドリンとギターの二重奏です(編曲作品ではありません)。
耳コピーで採譜し編曲したクロアチア民謡「Nemoj Kate」、マンドリン、ギター、ピアノの演奏です。
耳コピーで採譜、編曲したイタリアの伝統的な器楽曲(タイトル不明)、マーチ風の自動伴奏をつけました。
軽快なポルカ、「憧れ」(作者不詳)を耳コピーで採譜しマンドリン、ヴァイオリン、ギター、カスタネットの合奏に編曲しました。
耳コピーで採譜しマンドリンとギターの二重奏に編曲した「The Italian Polka」です。
最後はマンドリン合奏用に編曲しましたヴェネツィアの舟歌「Gondoli Gondola」です。
1stマンドリン、2ndマンドリン、マンドラ、マンドセロ、ギター、ベースの6パート編成です。
最後に一つ追記です。
有料版Finaleの体験版は2020年10月現在提供が中止されていますがネット上には提供しているサイトがいくつか存在し、最新バージョンVer26.3.1.520をダウンロードしてみました。
日本語版はなく日本語化パッチもないようですし試用期間が30日と決められています。
さっそく内蔵のマンドリン音源を調べてみました。
あるにはありますがピッキング音源だけで音質は手持ち無料版のFinale NotePad 2012Jと変わりませんでした。
マンドラやマンドセロの音源はありません。
ユーザーマニュアルによればトレモロ奏法ができるとありますが何のことはない、長音符を32分音符で小刻みに弾かせるだけのことで話になりません。
念のため音源ファイルであるsynthgms.sf2サウンドフォントだけ取り出して保存しておきました。
こうしておけば試用期間が終わっても無料版Finale NotePad 2012Jを使ってこの音源を鳴らして検証することができます。
順に思い出しながら長々と書いてきましたが記憶の薄れたところは改めて検証しての作業でした。
今後進展がありましたら、またVienaをどう使ったのか書き足らないところもあり、今後追記してゆければと考えています。
何とか電子マンドリン楽団QAZを実現しようと長年奮闘していますが、完成までにはまだまだ先の長い道のりと感じます。
ライフワークとして気長に取り組んでゆく覚悟です。