イタリア 1
私の趣味がイタリア発祥の楽器マンドリンということもあってこれまでイタリアには最多の7回訪れています。
・1987.6 15日間 欧州におけるディジタル通信技術実態調査(社用)
・1992.7 8日間 夫婦で
・1999.7 9日間 家族と親戚で
・2005.10 9日間 家族で
・2013.8 9日間 シエナ、フィレンツェで仲間29人でマンドリン演奏
・2014.5 8日間 シチリア島タオルミーナで仲間23人でマンドリン演奏
・2019.10 8日間 夫婦と仲間10人で
ここでは2013年8月に行きました人生初の海外での演奏旅行についてブログ記事を編集して綴ってみたいと思います。
[目 次] (青色文字の項目にはリンクが貼られています)
1 イタリア演奏旅行 (2013年4月28日のブログを編集)
2 イタリア公演 (2013年8月17日のブログを編集)
3 渡航準備 (2013年8月20日のブログを編集)
4 イタリア演奏旅行記 (2013年9月2~14日のブログを編集)
5 教会での演奏 (2013年10月1日のブログを編集)
6 イタリア公演と定演の新聞記事 (2013年10月12日のブログを編集)
7 残響のはなし (2013年10月23日のブログを編集)
***
学生時代からマンドリンを弾きはじめて長く経ちます。
国内での演奏会出演経験は数多くありますが海外演奏はいまだ経験がなく、生涯一度は海外で演奏してみたいものと思っていました。
そんな折、幸運にも本場イタリアでの演奏の機会に恵まれました。
私とマンドリンの師を同じくする兄弟弟子で、マンドリンアンサンブルを率いるコンミスのお誘いによるものです。
今夏8月下旬の9日間、総勢30名の予定で、シエナとフィレンツェの教会で演奏します。演奏会だけでなくヴァチカン、ローマ、サンジャミーノ、ピサなどの観光も盛りだくさんです。
マンドリンに関係なくイタリアにはこれまで公私あわせて4回訪れています。
・欧州におけるディジタル通信技術実態調査団、15日間(イタリア等5ヶ国、1987
年)
・「カンターレ・イタリア8日間」のツァー(1992年)
・「北イタリア・絶景のドロミテ渓谷と浪漫あふれるオーストリア9日間」のツァ
ー(1999年)
・「陽光の南イタリア・シチリア島9日間」のツァー(2005年)
どれも思い出に残る素晴らしい旅でした。
長くマンドリンを弾いてきまして、ずっとやりたいと思っていることに
・シチリア島タオルミーナのサンドメニコパレスホテルに泊まって、このホテルで
演奏している世界一美しいと言われるタオルミーナマンドリン合奏団の生演奏を
聴くこと
・私のマンドリンが作られたナポリのカラーチェ工房を訪れること
・そしてマンドリンの生まれたイタリアで演奏すること
があります。
今年このうちの一つが実現します。
海外演奏は自分の努力だけでは絶対実現できないことで、有難いことです。
演奏予定のサント・スピリト教会(フィレンツェ)
今月から公演に備えての合同練習も始まりました。
イタリア公演のための旅行(8/22~8/30)まであとわずかとなりました。
演奏会は
・8/24 シエナ:サンタ・マリア・ポルティコ・フォンテジュスタ教会
・8/27 フィレンツェ:サント・スピリト大聖堂
いずれも21時半からの演奏です。
海外での演奏経験は初めてですが、イタリアは今度で5度目となります。ローマ、フィレンツェ、ミラノで自由時間がありますのでどこに行こうか考えています。月曜日は多くの博物館、美術館が休館となってしまいます。
今のところローマではバスでティヴォリ(雨ならローマ国立楽器博物館)へ、フィレンツェではドゥオモとジョットの鐘楼に上って、あとはガリレオ博物館、ヴェッキオ橋からミケランジェロ広場方面の散策、ミラノでは電車でコモ湖(雨なら「最後の晩餐」見学、予約済み)にしようかと、ネットと首っ引きでホテルからの行き方などを調べております。
旅行は行くまであれこれ準備するのも楽しいと言います。確かに一面そうですが、歳とともに面倒で億劫になるのも事実です。この猛暑、どこにも行かずこのまま家にいればどんなに楽かわかりません。
今回の旅行、妻と一緒に行きたいのですが、同居している義母が89歳の高齢で海外旅行は無理、一人置いて行くわけにはゆきません。
母は頭はしっかりしていますし身の回りのこともできますので「留守番してるから二人で行っておいで」と言ってくれますが、留守中母の身に何かあっては取り返しがつきませんし、火の用心や戸締りもやはり心配です。
というわけで私一人で行くことになりましたが、荷造りは100%妻がやってくれますので私はノータッチです。
妻は荷造りは自分の役目だと思っているのか、相当前から必要なものをメモし不足なものは買ってきて、私にはやらせません。
パスポート、ユーロ紙幣もちゃんと揃えておいてくれます。
旅慣れた人は旅の支度もまことに簡潔なのですが、妻は心配性なのか荷物はいつも多めです。
国内旅行でも海外旅行でも集合場所に集まってほかの人の荷物とそれとなく見比べますと私たちの荷物はたいてい3~5割ほど多いのです。
極端に言えば国内旅行でもまるで近場の海外にでも行くかような荷物です。
これではいつまで経ってもまるで旅行経験一年生です。
私は両手がふさがってしまうような荷物の持ち方が嫌いです。
そんなときはどうにかして荷物を一つにまとめようとしますが妻は無頓着です。
今回はいつものスーツケースとショルダーバックのほかに楽器がありますから両手がふさがってしまうのはやむを得ませんが、とっさの行動が取れませんのでそれだけでやはり相当ストレスです。
私の楽器はマンドリンですから小型で機内持ち込みも可能ですが、大型楽器の人は持ち運びがほんとに大変だろうと思います。
さらにステージ衣装や楽譜、譜面台といった、いつもの旅行にはない荷物があります。
夏ですから衣類は軽装で楽ですが、妻は着替えをまとめて一日分ごと日付を書いた紙とともにビニール袋に入れてくれています。
何も考えず日ごと順に消化してゆけばいいので楽ですが、袋は滞在日数分ありますから結構かさばります。
もし私が荷造りするなら日にちごとにまとめないで、身につける衣料ごとまとめて、二日に一度着替えたら良いものは数量を半分にして軽量化を図るでしょう。
一応スーツケースに何が入っているか説明はしてくれますが、たいていほとんど忘れてしまいますから、ホテルで開けてみてこんなものまで入っているとびっくりします。
意外なものが入っていて助かったこともありますし、一度も使わず無駄だったものも多くあります。
荷造り一つにしても性格の違いが出て面白いです。
私のマンドリンは1962年生まれのイタリア製ですから、このたび51年ぶりに生まれ故郷に里帰りすることになります。
湿気のないカラッとしたイタリアで思う存分音が出せると、一番喜んでいるのはわが愛器かも知れません。
出発は22日ですが余裕をみて明日21日成田に前泊します。
今回8月22~30日まで9日間のイタリア演奏旅行、ひとことで言えば今までになく大変に疲れました。
考えられる原因はいろいろありますが
・夏の暑い時期にたくさん見て回ろうと歳も考えず頑張り過ぎたこと、特に500段
以上ある塔に3つも登ったこと
・ツァーでは必ずついているポーターがいないため重いスーツケースをひきずりま
わして肩と腰を痛めたこと
・旅行中いつもは家内がやってくれていたことをすべて自分でやらなければなら
なかったこと(自分のことは自分でするのが当たり前との声あり)
などが重なったと思います。
旅行から帰ってバタンキュー、14時間眠り続けて少しは元に戻りましたが、まだ体のあちこちがギシギシします。
旅行の前には下準備が肝心です。
まずカードはANA JCBとVISAカードを持って行きました。
JCBは日本のカード会社ですから海外で使える店がVISAに比べて限られていますが、その分海外での特典やサービスに力を入れています。
カード使用でANAマイルもたまります。
VISAは年会費無料の提携ゴールドカードで、空港のラウンジが使え空港からのスーツケース宅配の大幅割引も今回利用しました。
このようにお互いを補えるカードを2枚程度用意しておくと便利ではないでしょうか。
あらかじめカード会社からネットで優待ガイドや旅行先の地図などを取り寄せ、いろいろやっているキャンペーンにもエントリーしておきました。
またカード会社の空港や街中のサービスカウンタに立ち寄るといろんな特典を受けることができる場合がありますので調べておきます。
空港での食事は一般に高いばかりでおいしくないですが、今回は朝食にカード会社の空港レストラン割引クーポンを使いました。
この旅行の直前ナポリでツァーバスが谷底に転落、37名死亡とのいやなニュースがありました。
旅行保険は必須ですが、旅行会社が保険会社とタイアップしてパンフレットで勧める旅行保険や渡航当日成田で加入手続する保険などは非常に割高です。
クレジットカードに付帯する保険に不十分な補償項目のみオンライン契約でバラ掛けするのが一番得策と思います。
これについては長くなりますので別の機会にしたいと思います。
ヨーロッパのほとんどがユーロで統一され昔のように国をまたぐたびに両替に走る必要がなくなりほんと便利になりました。
ユーロになる前の各国紙幣とコインがたくさん残っています。
最近はよほどの長期滞在でもない限り使い勝手の悪いトラベラーズチェックは持たない旅行者がほとんどではないでしょうか。
持参ユーロは安いときに買っておいたユーロで間に合いました。
旅行の最後、余ったユーロは次回使うとか記念に持ち帰る以外は買い物ですべてはき出し不足分をカードで支払えばすっきり全部なくなります。
紙幣は持ち帰ってもっとユーロが高くなったときに売るという手もあります。
今回の旅行では希望者はミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会でレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」をオプショナルツァーで鑑賞することになっていますが6,800円と高額です。
海外旅行では日頃高額に思えるものでも気が大きくなってついついマアいいやと思ってしまいがちです。
日本からネットで予約すれば予約料1.5ユーロ込みで8ユーロ、ガイド料込みでも11.5ユーロで済みますから予約しておきましたが、やり方は少々手間がかかりました。
早い時期に予約しましたのでかろうじて希望の日時に予約できました。
ガイドはイタリア語ですので不要にしたかったのですが、やり方がわからずガイド込みの予約になってしまいました。
しかし現地でガイドの代わりに同額で日本語のオーディオガイドを借りれることがわかり交渉して代えてもらいました。
例えガイドがなくてもいいように日本文の詳しい解説を持参してはいましたが。
オプショナルツァーと違って自力で行かなくてはいけませんのでホテルからの行き方をグーグルマップで調べ、地下鉄の路線図や乗り方も調べておきました。
知らない土地を電車などで移動する場合、目的の駅の一つ手前の駅名も知っておくと乗り過ごさないで済みますのでとても安心です。
航空会社のマイレージは、どの飛行機に乗ってもマイルが貯まるようスターアライアンス、ワンワールド、スカイチームのどれにも入っています。
今回の旅で乗るKLMオランダ航空はスカイチームですから空港のカウンタでデルタ航空のマイレージカードに積算してもらいました。
デルタ航空のスカイマイルは有効期限が無期限で、JALやANAの国内線に乗っても片道500マイル加算してもらえる利点があります。
最後に外務省の海外安全ホームページのイタリア編を一読しておきます。渡航先の詳しい渡航情報、危険情報が載っていますので必読です。今回の旅行でスリに3回も遭遇しましたが事なきを得ました。油断もスキもありません。
今回の旅行では集合時間に間に合う成田エクスプレスやリムジンバスもありましたが、そう時間に余裕がないため安全をとって成田近くのホテルに前泊することにしました。
以前、国内旅行でしたがリムジンバスが渋滞に巻き込まれ空港に着いて走りに走ってあぶら汗タラタラ、出発10分前にゲートにたどり着いたことがあります。
国内はいちいちカウンタでチェックインしなくてもカードでタッチ&ゴー(ANAはスキップサービス)すれば乗れますので助かります。
また知人で海外旅行でしたがやはりリムジンバスが渋滞し、とうとう目的の飛行機に乗れず、その日成田に泊り翌日の便で追っかけツァー2日目から何とか合流できた人もいます。
目の前で乗るべき飛行機が飛び立ってしまった無念さは想像に難くありません。
今回は楽器も持っていますし機敏には動けません。
空港の人間模様は椅子に座って眺めていますとなかなか面白いものがあります。
隅っこの方でスーツケースを開けて何やら一心に物を押し込んでいるおばさんが一人や二人必ずいます。
ケースの中、臓物が他人に丸見えですが本人はそんなこと構っている余裕などありません。
一杯詰め込んでなかなかケースが閉まらず、ケースの上にドンと座り込んで体重で無理やり閉めようとあせっています。ケースの悲鳴が聞こえてきそうです。
空港のレストランってどこもどうして高いばかりでおいしくないのでしょう。
お店も利益率の高いものばかりしか置いてない感じです。
たとえばちょっとサンドウィッチと牛乳が欲しいと思ってもなかなかありません。
もっと買う人の立場で品揃えしてほしいものです。
最近はゴールドカードを所有する若い人も多く、空港のラウンジは混んでいます。
搭乗日の前日は利用できませんでした。
ビジネスクラス以上の搭乗者が利用できる航空会社のラウンジはカード会社のラウンジよりさすが上質です。
ツァーを選ぶとき私は可能な限り航空会社はANAを、次にJALを選択します。
やはり海外の航空会社に比べて細かいところが行き届いています。
人気の高いシンガポール航空はさすがいいですが、その分運賃も高いです。
今回は手配旅行でKLMオランダ航空でした。
AB-ROADの2013年度総合満足度第9位の航空会社です。
エールフランスグループで最近人気上昇中ですが、機体や機材は古くクルーの勤務態度、サービス体制もあまり良いとは言えません。
行きは1時間、帰りは2時間以上も出発が遅れました。
座席の液晶モニタは輝度が薄く、日本語吹き替え版の映画も少なめです。
機内食は一時どこの航空会社も経費切り詰めで質が悪かったですが最近サービス競争が激しいのかまた質が上がってきたように感じます。
KLMの機内食は可もなく不可もなくといったところでしょうか。
3人席に私とオランダに遊びに行くという日本人の母と子が座ったのですが、中央に座った小学一年生の子供がジュースをこぼさないかヒヤヒヤものでした。
このようなとき子供は端に座らせるべきだと思います。
この母親、機内で高い免税品を買ったせいかクルーの受けが良く、子供を機長席に連れて行ってもらって親子ともどもご満悦な様子でした。
もっと子供の横の乗客にも気配りしてほしいものです。
アムステルダムまで12時間近く、いつもながらロシア国土の広さを思い知らされます。
一日目はアムステルダム経由ローマに着いてホテル泊、2日目はさっそくヴァチカン観光です。
この日の朝、ホテルの朝食会場に行くとメンバーの姿がほとんど見えません。
あとで聞くとみんな早めに食事を済ませてホテル近くのスーパーに水などの買い出しに行っていたようで初日から元気の良いこと。
水は以前一度間違ってガス入りを飲んで口に合わず、いつもガス入りでないのを求めてましたが、今回改めてガス入りを飲んでみて夏に意外とすっきりしてガス入りもいいなと思いました。
水はホテルで買えば1本1~2ユーロしましたが、スーパーで0.28ユーロという所もありました。
トマトを買ってみましたがおいしくないこと、日本のトマトの方がよほど甘味があっておいしく感じます。
ホテルの朝食は食べ放題スタイルですからついつい食べ過ぎて体調を崩しますので、旅行中常に腹八分目を心がけました。
いつもは旅行から帰ると必ず体重が増えているのですが今回は珍しいことに減っていました!
ヴァチカンは一度行っていますが大分様子が変わっている所もありました。
大聖堂に入ってすぐ右側、最も有名なミケランジェロの「ピエタ像」は以前と違ってガラス越しにしか鑑賞できませんでした。
ガラス越しのピエタ像
ガラス越しに撮影しますとガラスに焦点が合ってしまい肝心のバックの像がぼやけてしまう失敗をよくします。
ヴァチカンでの見どころはサン・ピエトロ大聖堂とヴァチカン美術館(「最後の審判」のあるシスティーナ礼拝堂を含む)ですのでどんなツァーでも必ず見学しますが、大聖堂もじっくり時間をかければメインの身廊のほかにもクーポラ、法王の墓、ヴァチカン庭園、歴史美術館など見てまわることができるようです。
これだけ立派な大聖堂の身廊が無料で見学できるとは驚きです。
前回のツァーでは時間の関係で果たせなかったクーポラに今回ぜひ上ってみたいと、午後のフリータイムに551段の階段を頑張って上ってみました。
いやはやしんどいこと、しんどいこと。
クーポラ屋上テラスからの眺め
しかし頂上からのヴァチカン、ローマの眺めは汗も吹っ飛ぶ素晴らしいもので、苦労して上っただけのことはありました。
前回訪れたときヴァチカン市国はまだユーロ圏ではありませんでしたのでコインと切手を記念にしましたが、今回は家族に葉書を出し記念切手を求めました。
ヴァチカンの切手
葉書は13日かかって今日9月5日、日本に届きました。
ここからあの丸いサンタンジェロ城のそばを通ってホテルまでぶらぶら歩いて帰りました。
3日目はローマから北上しサン・ジミニャーノで昼食と見学、そしてまた少し南に戻ってシエナまでバス移動、夜はいよいよシエナでの演奏です。
ここでいきなり楽器はバスの座席に置いてはいけないとのことでトランクにスーツケースと一緒に積み込まれました。
別の日の別のバスでは座席に置いて良いとのこと、一体どんなルールになっているのだか訳わかりません。
トランクでは振動や温度など楽器への影響がとても心配ですが仕方ありません。
塔の町で有名なサン・ジミニャーノは行ったことがありませんでしたので楽しみにしていました。
サン・ジミニャーノの町の遠景
テレビの旅番組でも良く見ていた町です。たまたまこれを書いている日にも、CSデジタルの旅チャンネルでサン・ジミニャーノとシエナを放映していましたので懐かしく視聴しました。
町の入口の門から出口の門まで狭い石畳みの両側にみやげ物屋が並ぶ通りをゆっくり歩いても15分くらい、町の中心に広場があるこじんまりとした町でした。
このような塔が町に14本
せっかくですから塔に上ってみようと入口まで行ったのですが、さきほどの昼食で調子に乗って飲んだ試飲の赤、白ワインのせいでアルコールに弱い私の足はフラフラ、とても上れる状態ではなく断念、大失敗でした。
シエナではいよいよ夕方演奏です。
黒の上下にえんじのネクタイの衣装に着替えてホテルからタクシーに分乗、会場であるサンタ・マリア・ポルティコ・フォンテジュスタ教会に向かいました。
なかなか一口では言いにくい長い名前の教会です。
教会の入口、左側にポスターが見えます
教会の内部
演奏しました曲は
・歌劇「ナブッコ」より/G.Verdi
・星に届く樹/坂野昭美
・童謡集/中川信良編曲
・セレナータ・シエナ/R.Brandani・川口優和編曲
・黄昏前奏曲/Dino
・劇的序楽「細川ガラシャ」/鈴木静一
アンコールにJ.B.Kokの魅惑島、そして最後にもう一度セレナータ・シエナを演奏して締めくくりました。
参加メンバーの方が当日の演奏の様子をYouTubeにアップしてくださいましたので転載させていただきました。曲は細川ガラシャです。コンミスは恩地マンドリン研究所の恩地早苗先生です。
お客さまは100人弱、やはりイタリア人に馴染み深いナブッコ、そしてそれにも増して地元の曲であるセレナータ・シエナに格別多くの拍手をいただきました。
また細川ガラシャは曲を理解していただくために少々丁寧すぎるほど解説をしたこともあり、演奏はお客の理解を得て心に響いたようでした。
私にとって教会での演奏は初めてのことでしたが、反響が良く残響も長く(なかなか音が減衰しない)、音が重なってワンワン響く感じで、コラールなど教会音楽を奏するのに適しているのでしょう。
客席から音を確かめてみることはできませんでしたが、反射音に比べて直接音が強勢な奏者に近い前方で聴くのがより聴きやすかったのではないかと思いました。
団創立以来の念願であったシエナでの演奏を果たされたエルシエナ・マンドリンアンサンブルのメンバーの方々は感慨もひとしおであられたことでしょう。
当地のシエナマンドリン合奏団(Orchestra Plettro Senese)を主宰するAngela Castellarinさんには大変お世話になりました。
教会の前の通り
教会の前の通りはお祭りでしょうか、このように夜遅くまで賑わっていました。
シエナでの演奏を終え、あとはフィレンツェでの演奏を残すだけとなり半分肩の荷の下りた翌4日目はシエナとピサを観光しフィレンツェに向かいました。
シエナのホテルを出発するときは雨と雷でどうなるかと思いましたが、すぐ止んでピサに着く頃にはすっかり晴れていました。
旅行中この日だけは朝昼晩、3食ついていて食事の心配をすることなく観光できます。なにせ本場イタリアに来たのですからおいしい物の一つも食べたいという気だけはあるのですが、なにしろ毎日歩き疲れてしまって食べる所を探すのも面倒で、3食ついているのは実に有難いのです。
ピサは一度行ったことがありますがシエナはサン・ジミニャーノ同様初めてで、
とても楽しみにしていました。
シエナでの見どころはカンポ広場とドゥオモです。
カンポ広場とマンジャの塔
都市国家として栄えたフィレンツェ、サン・ジミニャーノ、シエナですがフィレンツェに呑み込まれたサン・ジミニャーノは対抗するシエナへの最前線基地として機能、やがてシエナもフィレンツェに呑み込まれてゆきます。
しかしシエナのフィレンツェに対する対抗意識はそれから数百年以上経った今も民衆の意識の底に脈々と燃え続け、それが毎年7月2日と8月16日のパリオ(競馬)となって昇華、カンポ広場を熱狂の渦に巻き込みます。
どうも長い間にDNAがそう組み上がってしまっているのか、シエナの人々は「これは理屈ではなく我々の血なんだ」と言います。このパリオを見ない限りシエナの本当の姿を肌で感じたことにはならないのかも知れません。カンポ広場に立つと民衆の歓喜と大歓声が聞こえてきそうな気がします。
ドゥオモ
息を呑むほどに美しいとされるドゥオモですが、内部の写真は撮影禁止だったためご紹介できず残念です。
ピサへの途中車窓から一面のひまわり畑やぶどう畑、糸杉の林など典型的なトスカーナ地方の景色を堪能しました。
地元生まれの運転手がほかの運転手の知らない景色の良い道を選んで走ってくれたとのこと、ラッキーでした。
ところがいざ写真に撮ろうとするとよけいな立て看板や電線、電柱、雑木林が写り込んでなかなか絵葉書のようないい写真が撮れません。
カメラを構えてからシャッターを押すまでにどうしても時間がかかりますので走っているバスの中からでは構えたときには見えていなかった余計なものまでスゥーと入ってしまうのです。
ここで「ひまわり」とか「ロミオとジュリエット」の音楽流してくれたら最高だろうなと思いました。
ピサでは前回果たせなかった斜塔に上りたかったのですが、夕方まで予約がいっぱいとのことで残念ながら上れませんでした。
ドゥオモ付属の洗礼堂では抜群の音響効果を披露するため30分ごとにパフォーマンスが行われています。
と言ってもなんてことはなく、単に係りの人が簡単な和音の構成音を順に発声するだけ、わずか10数秒くらいのものです。
堂内入場は前回確か無料だったと記憶していますが、こんな見せ物が今は有料になっていました。
これはデジカメで撮ったその時の動画ですが、今回初めて2階で聴いてみようと階段を駆け上がりデジカメを録画モードに準備している間にパフォーマンスが始まってしまいました。
デジカメ動画のファイル形式はmtsですのでこのままではYouTubeに載せられずファイル変換が必要になります。
ソニーデジカメの場合はPMB(Picture Motion Browser)という画像管理ソフトをインストールします。
なんでもいちいちややこしいのがパソコンです。
夕方頃フィレンツェ市内を展望できるミケランジェロ広場に着きました。
少し高台になっているミケランジェロ広場は、フィレンツェ市内を一望できますのでフィレンツェ観光では必ず立ち寄る広場になっています。
アルノ川に架かるヴェッキオ橋からドゥオモまで一望
5日目はこの旅行で唯一丸一日自由時間に充てることのできる日です。
私は一度フィレンツェに来ていますし翌日は全員でフィレンツェ観光をします。
フィレンツェにはウフィツィ美術館のほかにも見るべき美術館はたくさんありますので美術館巡りもいいのですが、あいにくこの日は月曜で多くの美術館が休館日です。
この日オプショナルツァーでヴェネツィアに行くメンバーも多くいました。
今回はマンドリンを持参しての旅で、こんな機会は滅多にありません。
ヴェネツィアに行くならゴンドラに乗ってマンドリンでイタリア民謡やカンツォーネの一つでも弾いたらどんなに気分いいだろうと思いましたが、私はヴェネツィアに3度行ってその度にゴンドラに乗っていますので今回はどこか知らない近郊に出掛けたいと思いました。
トスカーナの観光農家でも訪れて牧草に寝そべって夕暮れの景色を眺めながらマンドリンを弾くというのもいいかも知れません。
あれこれ考えているうちホテルで同室の人がボローニャとその先のモデナに行くというので同行させてもせらうことにしました。
ボローニャは大学の町で有名ですがモデナは初めて聞く地名でした。
私の持参したガイドブック「わがまま歩きイタリア五都市」(実業之日本社刊)には
モデナは載っていません。
今日のテレビ、CSデジタル旅番組でまたまたボローニャをやっていました。
ホテルから歩いてフィレンツェ中央駅へ、広くて切符売り場を探すのも一苦労、
売り場の職員の作業ののろさはいかにもイタリアという感じ、モデナまで往復38.35ユーロ、ボローニャまでは高速列車ユーロスターで快適でした。
フィレンツェ中央駅からボローニャ中央駅までのチケット(11号車5C席)
日本のような改札はなく乗るとき切符を自分で打刻するのみで降りるとそのまま外に出られて切符は手元に残ります。
プラットフォームは電光表示も簡素、日本のように号車ごとの乗る位置の表示はありませんしアナウンスも至って静かです。
線路からホームまでの高さが非常に低く(その分列車に乗るときホームと列車の間にかなりの段差があります)、線路を突っ切って隣のホームに簡単に渡れてしまいますので「線路を横切るな」の表示があります。
先にモデナに行きました。乗り換え駅のボローニャ駅は広大で、モデナ行きのプラットフォームを見つけるのに一苦労しました。
2番線のはずがそれらしい列車の気配がありません。Ovest(西)2番線とわかるまで相当あちこち駆けずり回りました。
見るべきものはグランデ広場、その広場にある大聖堂、これに隣接するギルランディーナの塔(いずれも世界遺産)です。
グランデ広場の大聖堂とギルランディーナの塔(背後)
モデナで昼食(私はボンゴレとカプチーノ)を済ませ列車でボローニャへ、モデナを遅れて発車したのにボローニャには予定より早く着くという不思議な列車でした。
ボローニャには非常に多くの教会がありまた美食の都とも言われます。
西欧最古のボローニャ大学がありますので大学に携わる者として以前から一度訪れてみたいと思っていました。
知らない町を歩くには地図は必携ですが、それにも増して便利なのが同行者の持っていたスマホのナビでした。
目的地を入力しますとGPS機能により現在地からの行き方を地図上で刻々教えてくれますので迷うことなく時間短縮にも大いに有効です。
ボローニャにもピサ同様斜塔があります。
高い塔がアシネッリの塔で高さ97m、低い方はガリセンダの塔で高さ48m。このうちアシネッリの塔に登ることができます。
二つの斜塔
ここまで来れば上らないわけにゆきません。サン・ジミニャーノでは失敗しましたが今度はコーヒーしか飲んでいませんので足はふらつかずしっかりと大丈夫です。
狭い階段を上るにつれ体が壁の一方に吸い寄せられる感じがしました。
塔の上からの眺め
旧ボローニャ大学解剖学大階段教室
これは世界初の人体解剖が行われたという教室と解剖台です。
なかなか歴史を感じます。
入口に日本語を含む各国語の説明資料が置いてありました。
このボローニャで何とスリに3回遭遇しました。
1回目は男性で教会の中、2回目は女性で先ほどの斜塔の入口です。
3回目は母親と娘のペアで、ボローニャのメイン通りは長く伸びたポルチコ(屋根付き柱廊)が続いていますがそこでのできごと、歩いていましたら母親が近づいてきて手のひらに描いた黒い葉っぱのような模様をチラチラ見せます。
何かと思ってそちらに注目している間に子供がそっと忍び寄ってきてポケットに手が伸びます。
当初私は子供の存在に気付きませんでした。危ないところでした。避けても避けてもしつこくすり寄ってきます。
「No thanks!」と大声出しましたらようやく離れてゆきました。
度を越して追及しようとすると陰にいるかも知れない元締めの男が現れたりすると厄介ですから素早くその場を離れます。
気味が悪いので帰りは道の反対側を歩きました。
すると先ほど斜塔にいた女性がスタスタ歩いています。
斜塔に上る人が少なくなったので場所変えをするのでしょうか。
何人か集団で手分けして仕事?しているのかも知れません。
すんでの所でどれも被害に遭わずに済みました。
共通することは相手は必ず何かで注意をそらせる行動を取ること、そして必要以上に接近してくることです。
また3回とも相手はイタリア人ではなくアフリカ系移民と思われました。
観光産業で表向き華やかに見えるイタリアも内情は高い失業率にあえいでいます。
まして移民たちの暮らし向きには厳しいものがあるのでしょう。
何もボローニャだけでなく、たまたま他で遭遇しなかっただけと思います。
幸い今まで海外旅行でスリの実被害に遭ったことはありません。
それなりに注意しているつもりですがこれからも油断はできません。
帰り、ボローニャからフィレンツェ行き列車に乗ったのですがこの列車、フィレンツェを経由してローマの方まで行く長距離列車でどうもフィレンツェ中央駅に停車しないことがわかりかなり慌てました。
フィレンツェ中央駅は行き止まりのターミナル駅だからです。
車掌に聞いて中央駅の一つ手前の停車駅で降りて中央駅行きに乗り換えるということがわかりました。
知らずにこのまま乗っていたら大変なことになるところでした。
6日目の午前中は全員でフィレンツェ観光、午後はフリータイムです。
午前中のメインは当然ウフィツィ美術館です。
予約してありましたがそれでも30分ほど並びました。
中でも目玉はボッティチェッリの代表作「ヴィーナスの誕生」と「春」ですが、以前来たときはガラス越しではなく鑑賞できた記憶があります。
同時に、人が大勢で絵が見えにくかったため人垣の後方のソファーに上って写真を撮り係り員に注意されたことも思い出しました。
午後の自由時間、ここでも塔に上ろうと決めていました。
ドゥオモのクーポラにしようかジョットの鐘楼の方にしようか迷いましたが(両方上る元気はありませんので)、鐘楼の方に上って美しいドゥオモを眺めることにしました。
鐘楼からのドゥオモの眺め
おもちゃ
これはフィレンツェの街角の路傍で売っていたおもちゃです。
丸く非常に柔らかいゴム状のブヨブヨのブタの恰好をしていて中に液状のもの(水?)が入っています。
滑らかな板の上に投げつけると写真の青い状態のようにぺちゃんこになるのですが、ものの1~2秒もすると元の球状に自然に戻ります。
面白いので買ってきました。1個2ユーロでした。今も食卓に置いて遊んでいます。
ホテルからフィレンツェ中心部まで一直線に歩いて行く途中10分くらいの所にある割合大きい楽器屋さんにオールドのマンドリンが置いてありました。
試奏してみましたが非常に良く鳴ります。
2,000ユーロとのこと、日本で売っていたら買っていたかも知れません。
今回の旅行、ここフィレンツェのホテルだけはバスタブがなくシャワー設備でしたが、作りが粗雑でシャワーの水が洗面室に漏れて困りました。
日本ならこんな構造には絶対しないだろうと思われる作りです。
また洗面台の水を流したり貯めたりする栓の調子が悪く係りの人に見にきてもらうと洗面台の下後方のレバーをガチャガチャ動かして「どんなもんだ、簡単に直るだろ」と言わんばかりのしたり顔で帰ってゆくのですがしばらくするとまたすぐ故障します。とにかく応急的に直ればそれで良しとする直し方にあきれます。
ホテルの部屋の金庫は開けたままの状態で一度施錠、開錠の操作を確かめてから使います。
この予行演習をしないでいきなり中に貴重品を入れて操作を間違えるとてこでも開きませんから係りの人を呼んで開けてもらわざるを得なくなります。
このホテルでは運悪く予行演習したのに開かなくなってしまって助っ人を呼びましたら来たのは何とさっき洗面台直した「あきれた君」!
「また何かやらかしたのかい」というような顔していました。
この人、部屋掃除のおばさん買収してマスターキーを手にすればホテル中の客室の金庫を開けることができてしまいます。
そんなこと考え出すと夜も眠れませんが、かつて台湾でのこと枕の下に貴重品を置いて寝たこともありましたが、次の日の朝すっかり取り出すのを忘れてチェックアウトしてしまい危うくツァーバスがホテルを出発する直前部屋掃除の人が見つけて届けてくれたことがありました。
枕の下に置く場合は翌朝必ず使うもの(例えば歯ブラシとか)と一緒に置くのがいいかも知れません。
また以前西欧のどこのホテルだか忘れてしまいましたが寝ている間に体長3ミリくらいの黒い丸い虫が這い出てきて噛みつき非常に痒く、何とか見つけてやっつけたのですが連泊した次の晩またもや同じ形の虫が出てきて危うく噛まれそうになったことがありました。
夫婦虫の生き残った連れがかたき討ちとばかり悲壮な覚悟で出てきたのかも。
チェックアウトの時部屋にチップ代わりに虫2匹揃えて置いておきました。
ホテルのロビーにて
この日の夜は演奏会ですので遊んでばかりもいられません。
早めにホテルに引き上げ気持ちを切り替え、またタクシーに分乗して演奏会場の教会に向かいました。珍しく少し雨がパラついていました。
フィレンツェでの演奏会場はアルノ川を挟んでホテルやドゥオモとは反対側にあるサント・スピリト教会です。
この教会は15世紀半ばに建造され、ミケランジェロ18歳の時の作と言われる木製のキリストの磔刑(たっけい)像があることでも知られています。
内部は地味な外観に似合わない広くてとても素晴らしい作りで、40もの礼拝堂があります。
見学は現在無料ですが有料化が検討されているといいます。
サント・スピリト教会
教会の内部
教会のHPに載った演奏会の案内
当日のプログラムは
・Ave Maria/F.Schubert
・劇的序楽「細川ガラシャ」/鈴木静一
・歌劇「ナブッコ」より/G.Verdi
・Ave Verum Corpus/W.A.Mozart
・星に届く樹/坂野慎哉
・静寂のあと/細野昭美
・風の印象詩/細野昭美
アンコールには中川信良編曲の童謡集を演奏しました。
リハーサル時のAve Verum Corpusの演奏動画です。参加メンバーの方が撮ってくださいました。
お客様は300人弱でほぼ満席状態、現地の日本人会の方々がいらっしゃってくださり、アンコールを急きょ童謡集に変更し大変喜んでいただけました。
シエナの教会の時に比べて3倍ものお客様で、そのため反響音がより吸収されるのか音が落ち着いて感じられました。
これで演奏予定のすべてを終了、旅程も明日のミラノ観光を残すだけとなりました。
サント・スピリト教会では演奏することに神経を集中していましたので肝心の教会内をじっくり鑑賞する余裕はありませんでした。
17世紀のイタリアの彫刻家ベルニーニをして「世界で最も美しい教会」と言わしめたこの教会、内部の撮影は許されていませんがネットには素晴らしい画像がいくつも紹介されています。
この旅行記の写真はすべて私のデジカメで撮ったものですが、この回だけはネットからの写真でこの教会の素晴らしい画像を見てみたいと思います。
木製のキリスト磔刑像(ミケランジェロ作)
ピエタ(ジョヴァンニ・ディ・バッチョ・ビージョ作)
何と素晴らしい作品の数々でしょう。
サント・スピリト教会に隣接して元修道院の食堂として使っていた小さな美術館があり、週1回土曜日にしか開きませんが教会と併せてここも一度見学してみたいものです。
美術館内の作品の一つ
いよいよ観光最終日の7日目、フィレンツェを後にしミラノに向かいました。
この移動は本旅行はじめての列車による移動で、重いスーツケースと楽器と一緒の大移動でした。
ボローニャに行くときに乗ったユーロスターに再び乗車しました。
フィレンツェ中央駅とユーロスター
午後ミラノで自由観光となりました。ミラノは2度目でドゥオモやエマヌエーレ2世アーケードに記憶があります。アーケード内は高そうなので少し外れたところでグループの人たちと昼食。
私はピザとカプチーノ。この旅行記ではじめて食べ物の写真です。
実はずい分食べてから気が付き、同じものを注文された隣りの女性のピザを写させていただきました。
そしてサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会で日本から予約しておきましたレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を鑑賞しました。
教会の「最後の晩餐」入場口
教会へは地下鉄2号線でCadorna駅下車、徒歩10分ほどでした。
Googleマップで地図だけでなく同時に航空写真もコピーしておきましたので付近の建物の形が良くわかって探し歩く際大いに助かりました。
ここミラノでもドゥオモの屋上に上ってきました。旅の最後、4度目の塔上りですがさすが疲れもたまってここはエレベータを使いました。塔の先端まで近くに見え大迫力でした。
ドゥオモ屋上からのエマヌエーレ2世アーケードの眺め
エマヌエーレ2世アーケード内にRICORDIという大きな楽器店がありCDやマンドリンの楽譜を見てみました。RICORDIは200年以上続く、ミラノに本拠をおく楽譜出版会社です。
RICORDI楽器店
ラニエリ(S.Ranieri、1882-1956、イタリア)の教則本などが置いてありました。
旅行前には近郊のティヴォリに行こう、コモ湖にも行ってみようなんて計画だけは立てていましたが、いざ実際の場面になってみますと一つ一つのことに日本とは勝手が違っていちいち時間がかかりますので予想していたとは言え余裕がありませんでした。
今回の旅行、何より長年の夢であった海外でのマンドリン演奏を実現でき、シエナ、サンジャミーノ、ボローニャ、モデナといった行ったことのない町を散策でき、またローマ、フィレンツェ、ピサ、ミラノでは前回できなかったことをいろいろ経験できました。
8、9日目はミラノ発アムステルダム経由、メンバー一同無事帰国することができました。
10月14日には帰朝報告演奏会が予定されています。
生涯の記念となるこの演奏旅行に誘ってくださったエルシエナ・マンドリンアンサンブルの主宰者はじめ参加メンバーの皆さまには大変お世話になりました。
改めて感謝とお礼を申し上げこの旅行記をしめくくりたいと思います。
有難うございました。
今回イタリアの教会での演奏は音響的に普段日本の練習場で演奏している感じとは大きく異なっていました。
教会では音の反響が大きくリバーブがかかったように音がワンワン響き、それが長く続きますから次の音と重なって音の分離が悪く、早く言えば洞窟の中の音の響きに近いような感じです。
そこで波形的には果たしてどうなのか、同じ曲を日本の練習場、シエナの教会、フィレンツェの教会で録音したもので比べてみました。
日本の練習場での演奏
シエナの教会での演奏
フィレンツェの教会での演奏
各波形とも上が曲の冒頭から約10秒間の時間波形で、振幅が大きいほど音量が大きいことを示しています。下はある瞬間の約10kHz位までの周波数特性を示しています。
会場の広さはフィレンツェの教会が一番大きく、次がシエナの教会、一番小さいのが日本の練習場、演奏者と聴衆を合わせた人間の数はフィレンツェの教会が300人程度、シエナの教会が100人程度、日本の練習場は演奏者のみです。
3つの波形を見比べますと日本の練習場と教会の時間波形にかなり差のあることがわかります。
日本の練習場では波形にくびれが現れていますが、教会特にシエナの教会ではそれがあまり目立ちません。
日本の練習場でくびれて音が小さい時間、教会では反射音が重なって振幅変化が少なくなっていると推測されます。
建物の壁の材質によって周波数特性が異なってくると考えられますが、この調べ方からは周波数特性にそう顕著な差は見られません。
10kHz以上の成分が無いのは録音機材の録音特性等によるものと思われます。
録音する位置によっても違った結果が出ることでしょう。
会場の残響特性、周波数特性を調べるには楽音ではなく決められた周波数の純音やあらゆる周波数成分を含むインパルスを用いる等、もっと専門的な調べ方をする必要があると思います。
人間の耳には、会場に人間が多いと人間の凸凹や衣服が反射音を吸収し明らかに反響の影響が少なくなるように感じます。
残響の大きい教会ではコード進行や音程変化の激しい速い曲よりゆったりした曲が美しく聞こえるのではないでしょうか。
実際のシエナとフィレンツェの教会での演奏録画サンプルは下記旅行記の中のYouTube動画をどうぞご覧ください(上記波形の曲とは異なります)。
・シエナでの演奏(サンタ・マリア・ポルティコ・フォンテジュスタ教会)
・フィレンツェでの演奏(サント・スピリト大聖堂)
10月10日の読売新聞京葉版朝刊に8月のイタリア公演のことが以下のとおり記事になりました。
千葉のMちゃんが知らせてくださいました。
記事は以下のとおりです。
千葉市を拠点に活動する市民マンドリン合奏団「エルシエナ」が、10月14日に京葉銀行文化プラザ(千葉市中央区富士見)で定期演奏会を開く。
8月には初のイタリア公演を成功させ、10月14日当日は現地で披露した曲も演奏する予定だ。
エルシエナは代表の大西順子さんが中心となって2004年に結成した。
イタリアでの公演は大西さんを含むメンバー9人に加え、全国から募った約20人のマンドリン愛好家が参加した。
会場はフィレンツェとシエナの教会で計約400が来場、誰でも親しめるようにと、「アベ・マリア」などに加え、現地に住む日本人のために「七つの子」などの曲も披露し、会場は拍手に包まれたという。
14日の演奏会では、オペラ歌手との共演も予定している。
大西さんは「イタリアでも響いたマンドリンの調べを、多くの人に届けたい」と話し、来場を呼び掛けている。
午後1時半開場、2時開演、入場無料。(記事ここまで)
***
イタリア公演のとき演奏ステージの後方に携帯型のレコーダーを置いて演奏を録音しました。もとより音質重視のプロの録音ではありませんが、帰国後これをもとに
記念盤のCDを作製しました。
私は音響の専門家でも何でもありませんが、この度イタリアの教会でマンドリン演奏をしてきたことから、教会での音の響きに関心が深まりました。
ずっと無線通信の仕事に関わってきましたので電波と音波の違いはありますが、ともに空中を飛び交う仲間ではあります。
まず最初にひっかかるのは残響(Reverberation、略してリバーブ)と反響(Echo、エコー)の違いです。
発生のメカニズムはどちらも同じで、反響はやまびこやこだまのように反射音を明瞭に識別できるものを言い、残響は反射音どうし交じり合って個々の反射音を区別できなくなった状態を指すようです。
よく「このホールは良くできていて残響何秒だ」という言い方をしますが、残響時間の定義はどうなっているのでしょう。
残響時間は、音源が発音を止めてから残響音のエネルギーが60dB(デシベル)減衰するまでの時間を言い、60dB減衰するとは聞こえる音のエネルギーが100万分の一(10のマイナス6乗)にまで小さくなることを表しています。
数式で書けば対数の式になります。
共に音の強さを表す物理量である音響パワーレベルと音圧レベルですが、次元的に音響パワーは音圧の2乗に比例しますので(電力と電圧の関係に似ています)、音のエネルギーが100万分の一になるということは音圧レベルで言えば千分の一になることになります。
これとは別に音には音の大きさ(感覚的なうるささ)を表す、いわば心理量としての物差しがありますので、音の話しになるといつも頭が混乱します。
音の強さと大きさは一対一には対応しません。
残響音が少なすぎると楽音は豊かさに欠け、多すぎると前後の音が重複して明確さに欠け、適度な残響が音に広がりと深みを与えてくれます。
最適残響時間は演奏される楽器だけでなく、音楽の様式、曲の時代や歴史、部屋の容積、さらに音楽家の個性によっても微妙に違ってきます。
何れにも向く万能のホールなど世の中に存在しないことになります。
コンサートホールの特性として残響時間を表記するときには500Hzの残響時間を代表として使い、音楽用ホールでは数秒程度、教会では7秒という所もあります。
オルガン演奏やグレゴリー聖歌に適した教会の残響時間は6秒前後と言われます。
クラッシックの場合は2秒前後の残響時間のあるホールでの演奏が最適だと言われており、東京のサントリーホール、紀尾井ホールの残響は満席時2.1秒、世界3大有名ホール(ウィーン学友協会大ホール、アムステルダム・コンセルトヘボウ、ボストン・シンフォニーホール)の残響もいずれも満席で2秒程度です。
壁材は周波数特性を持ち、大理石のような硬い材質で出来たホールの残響は低音域があまり響かず軽くて長い残響になり、壁が木で出来た部屋の残響は高音域がすぐに減衰し暖かい響きになります。
残響時間が500Hz以下の低周波音が長目で高周波音が短目の特性は、教会的で荘重感があり伝統的な響きになり、中高音が長目の特性は透明で現代的響きになります。
人間もホールの中では立派な吸音材になり、客席が満席になれば空席のときよりも残響時間は短くなります。
部屋の容積が大きいほど残響時間は長くなる傾向にあります。
これは私たちの直感とよく一致します。
残響は私たちが空間の大きさを知覚する重要な情報となっていて、目を閉じていてもそこが大きな空間なのか小さな部屋なのか残響の具合で知ることができます。
残響時間が長いと人は自然と大きい部屋に居るように感じ、反対に残響時間が短ければ自然と小さい部屋に居るような気がします。
そんな人間の自然な感覚に従って大きいホールの残響時間は長めに、小さいホールの残響時間は短めになるように設計されます。
室容積の大きな大ホールでは低音域の残響時間が長目な特性、室容積の小さな小ホールでは全周波数の音に対して平坦な特性が良いとされます。
上図はホールの容積と残響時間の関係を調べたものです(出典)。
この図から、音の伝搬時間は距離(一次元)に比例しますが残響時間は部屋の容積(三次元)の、しかも対数に比例すること、またプロテスタントよりも教会により重きを置くカトリックの教会の方が残響時間が長いこと、アメリカよりヨーロッパのホールの方が残響時間が長いこと等、なかなか興味深いものがあります。
教会でのオルガンコンサートは実に朗々と響いて素晴らしいですが、そこでピアノのコンサートをするとわんわん鳴り響いて風呂場状態になってしまいます。
ピアノに求められる残響時間はオケや弦楽器に比べずっと短めがよく、逆にピアノや室内楽向けのホールでオケが演奏しては音が痩せて聞こえてしまいます。
一般に早いテンポで演奏される歯切れのよい音楽では響き過ぎると聞きづらいものになり、逆にゆっくりと演奏されその響きの調和を楽しむには比較的長めの響きが必要になります。
響くホールの場合はバイオリンですと弓を短く使い音を短めに、ピアノですとペダルを少なめにしてメロディがボヤけないように演奏する工夫が求められます。
音響実験を行う目的で、周囲の壁面の音の吸収をできるだけ少なくして長い残響をもつように工夫された残響室、反対に室内の響きのまったくない無響室というものもあります。
また、普通音楽編集ソフトや楽譜作成ソフト等には楽音にリバーブ(残響)やエコー(ディレイ)を付加できる機能があり、これによりあたかも広いコンサートホールで聴いているかのような臨場感を出すことができます。
音響学は、建築音響工学、電気音響工学などの工学分野だけでなく音響生理、音響心理などをも含んで、それだけで本が何冊も書ける、私たちの想像以上に扱う範囲の広くて深い学問だと思います。
たまたま今回教会で演奏する機会を得ましたので、残響について少し考えてみました。