マンドリン等の聴けるサイト 

 

   

 [目 次] (青色文字の項目にはリンクが貼られています)

1 はじめに

2 今は亡きマンドリンの偉人たち

 2.1  Dave Apollon  

 2.2  Giuseppe Anedda

 2.3  Maria Scivittaro

   2.4  Giovanni Gioviale

3 世界で活躍中のマンドリニストとその楽団

 3.1  Ralf Leenen

 3.2  Ricardo Sandoval

   3.3  Jacob Reuven とKerman Mandolin Quartet

4 華麗なる撥絃楽器の世界

 4.1  Tamara Volskaya (ドムラ)

 4.2  Araceli Yustas Ruiz (バンドゥリア)

 4.3  Nataliya Gudziy (バンドゥーラ)

5 さいごに

 

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ネットの情報は流動的です。以下の情報はご覧いただく時点で内容が更新されたり削除されたりしている場合もあるかと思いますのであらかじめご了承ください。

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1 はじめに

 

マンドリン等の聴けるサイトとしてすぐ思い付きますのは、社会人団体や大学クラブなど学生団体、ソリストなど個人のサイトを検索して開きますと、定期演奏会で演奏した曲や作成したCD等の中から曲の一部または全部を試聴できることがあります。

 

さらに、ご承知のように最近はアメリカ発YouTubeに代表される動画投稿サイトが急拡大していまして、マンドリンの独奏、合奏に関しましてもほぼ無数にアップロードされております。

 

動画サイトの演奏はそれこそ玉石混合で、いい演奏に巡り合うためにはかなりていねいな検索が必要であり、大変根気のいる作業となります。ここではそのような動画サイトを中心に選りすぐりの素晴らしいマンドリン等の演奏のいくつかを見てゆきたいと思います。

 

2 今は亡きマンドリンの偉人たち

 

2.1  Dave Apollon 

 

まずはマンドリンの神様、Dave Apollon(デイブ・アポロン、1897-1972)の非常に貴重な映像と演奏です。彼はロシアのキエフ出身、アメリカでマンドリンをショービジネスとして世界で初めて成功させた人物であろうと思います。彼の音声も含めてよく残っていたものです。

Apollonの演奏動画はこのほかにもYou Tubeやその他の動画投稿サイトにいくつかアップされています。

 

 

ピアノ弾きが「スタッカートのことだけ考えて伴奏してりゃほかのことはなんも考えなくていいもんね」と、観客に笑いを誘っています。

 

Apollonに関して

When David Grisman met Jethro Burns and asked him who was the geatest mandolin player he ever heard, Jethro answered without hesitation,"David Apollon".

という逸話が残っています。

 

CDとしては、Acoustic Disc社からの「Dave Apollon-the Man with the Mandolin」(ACD-27)が入手可能かと思われます。
このCDには彼の33歳から59歳まで26年間の録音が収録され、流れるようなロシア民謡の調べは彼がロシア生まれであることを彷彿とさせます。

 

日本の土は踏んでいるようですが、日本での演奏記録は見当たりません。

 

2.2  Giuseppe Anedda

 

次はイタリア、サルディーニャ島生まれのマンドリンの名手Giuseppe Anedda(ジュゼッペアネダ、19121997)です。1971年、59歳のとき来日公演を果たしています。この時の演奏を聴き逃したことは一生の後悔と今まで思っていたのですが、何と先日プログラムが出てきました。記憶なんて全くあいまいなものです。

 

 

楽器はエンベルガーやエンベルガーの弟子製作のペコラーロを使用しています。

彼の演奏動画が残っています。

 

この動画の冒頭でAneddaが弾いています軽快な曲はG.B.Gervasio(1725-1785)のSonata per Camera di Mandolino e Bassoで、このサイトから楽譜を入手することができます。

CDでは1971年の来日時、ポリドール社から「Giuseppe Anedda-Mandolin Recital(POCH-1374)を残しています。

 

2.3  Maria Scivittaro

 

もう一人、欠かせないのがイタリア、トリノ生まれのマンドリンの女王、Maria Scivittaro (マリア・シヴィッターロ、1891-1981)です。

 

ベートーヴェン作曲のマンドリン曲は4曲知られています。その中の1曲「ソナチネ ハ長調」はいろんな人が弾いていますが、私は彼女の演奏が一番上手いと思います。

楽器はエンベルガーやフランス製の名器ジェラを愛用していたと言われます。

 

ソナチネ ハ長調 (演奏:マリア・シヴィッターロ

 

この曲の楽譜はピアノ伴奏譜がここに、CalaceがOp.47としてニ長調に編曲したマンドリン、マンドラ、ギターの四重奏譜がここにあります。

 

彼女の貴重なマンドリン演奏動画です。

演奏している曲はヴィヴァルディ(16171714 、イタリア)作曲の「マンドリン協奏曲ハ長調RV425」です。

 

CDでは東芝EMIから「The Art of Mandolin マンドリンの芸術-マリア・シヴィッターロの至芸」(TOCE8008~10)が出ています。このCDには43歳から何と78歳までの演奏が収められており、まさに歴史的名盤といえます。

彼女の日本への渡航記録は見当たりません。

 

2.4  Giovanni Gioviale

 

 2014年イタリア、シチリア島のタオルミーナで地元のマンドリン合奏団Orchestra a Plettro Citta di Taorminaと共演しました。その合奏団のコンマスにイタリアのbest mandolinistは誰かと尋ねましたら即座にシチリア、カターニア生まれのGiovanni Gioviale(ジョヴァンニ・ジョビアーレ、18851949)だと自信に満ちた答えが返ってきました。コンマスが自国で活躍した古き奏者をしっかり認識し敬意と誇りをもって弾いていることはさすがと思いました。

 

彼の演奏と彼が作曲した楽譜はネット上に比較的多く残っています。

 

 この曲はマズルカ、Viale Fiorito(花の大通り)で、楽譜はここにあります。

CDは1928-29年New York Cityで、さらに1930年代にItalyで採録されたもので、どの演奏も邦人の演奏では醸し出せない独特な味わいがあります。

 

3 世界で活躍中のマンドリニストとその楽団

 

3.1  Ralf Leenen

 

次に現在世界で活躍しているマンドリニストについて見てみたいと思います。

 

まずは1974年ベルギーはフランダースの犬の像で有名なアントワープ生まれのRalf Leenen(ラルフ・リーネン)です。

 1904年設立の歴史ある王立のLa Napolitaineを主宰し、20083月に初来日、その端正な演奏を披露してくれました。このときグループのメンバーとして弾いておられた唯一の日本人は藤倉有子さんです。

 

彼の演奏動画はYou Tubeに多数アップされていますが、その中からRanieri作曲Souvenir de Varsovie(ワルソーの思い出)をご紹介したいと思います。

 

 

 彼はエンベルガー研究家としても知られ、自らも1947年製のエンベルガーを使用しているとのこと。演奏もさることながら、来日演奏会を聴いていてびっくりしたことが二つありました。

 

一つは彼の楽器、エンベルガーが驚くほど良く鳴ることです。一般にエンベルガーの音色は日本人が好んで使用するカラーチェに比べて音色がおとなしく貴婦人のようだとも言われますが、彼の楽器はそれをはるかに超越してまさに名器でした。

 

もう一つはメンバーが使っているピックが私たちが普通使っているピックに比べてとても長く(恐らく6センチ以上はあろうかと思われます)、親指からはみ出てまるでうさぎの耳のようにぴょこぴょこ踊っているように見えてユーモラスな感じさえしました。私たちの感覚からすればあんな長いピックでよくもうまく弾けるものだと思います。

 

 

先が磨耗しても削って長く使えそうですし、反対側も使えそうです。

 

3.2  Ricardo Sandoval

 

次は1971年チリ生まれ、ベネズエラ出身のRicardo Sandoval(リカルドサンドバル)で日本には数度の来日経験を持っています。

 

この演奏をお聴きいただけば、彼がいかに卓越した技術の持ち主であるかおわかりいただけると思います。

 

 

イタリア等のオリジナルを聴きなれた耳には、マンドリンで奏でる南米の音楽に新鮮な響きと驚きを感じられるのではないでしょうか。

 

3.3  Jacob ReuvenとKerman Mandolin Quartet

 

1976年イスラエル生まれのJacob Reuven(ヤコブ・ルーヴェン)2年後輩のイスラエル生まれAvi Avital(アヴィ・アヴィタル)と共にマンドリン界のカリスマ的存在。

 

絃楽器製作者Arik Kermanが製作したフラット形の特注マンドリンを使用、元々絃楽四重奏のために書かれた作品を新しくマンドリンで演奏することを目的の一つとしたKerman Mandolin Quartet1st Mandolinパートを担当しています。

 

Kerman Mandolin Quartet

 

 Kerman Mandolin Quartetによるモーツァルトの嬉遊曲K136の素晴らしい演奏です。

 

このクァルテットの面目躍如たる堂々の演奏です。来日公演の実現が待たれます。

 

4 華麗なる撥絃楽器の世界

 

4.1  Tamara Volskaya(ドムラ)

 

マンドリンを弾く人はマンドリン以外にもいろんな国の民族楽器、特にマンドリンと同じようにフレットのある撥絃楽器に興味をお持ちの方も多いのではないかと思います。旅先の店頭にそんな楽器が吊るされていたりするとたまらず弾いてみたくなったりした経験はどなたもきっとお持ちのことでしょう。衝動的に買っちゃったという方もいらっしゃるかも知れません。

 

 また、日本人は外国民謡というとイタリア民謡とロシア民謡がことのほか好きで、イタリア民謡がマンドリンならロシア民謡はドムラということになります。

 

ドムラと言えば200895度目の来日公演を果たしたロシアの4絃ドムラの女王Tamara Volskaya(タマーラヴォルスカヤ、1945)をあげなければなりません。彼女は現在米国に在住、バヤン(ロシアアコーディオン)奏者のご主人とRussian Carnival Ensembleを主宰、また1991年からはAbaca String Bandというユニットで活躍、高度な音楽性と完璧な演奏技術を有し、世界最高峰のドムラ奏者と言えると思います。

 

ロシアの撥絃民族楽器ドムラには3絃と4絃のものがあり、いずれも単絃で、4絃ドムラはマンドリンと同じ調絃です。マンドリンを習いたての頃は複絃のトレモロの弾きにくさに閉口したものですが、いったん習得してしまえば、たまに複絃の一方が切れて単絃になってしまった時、単絃のトレモロの弾きにくさ、また単絃の音の味気なさ、なんと複絃の音がふくよかな味わいをかもし出していることか再認識することになったりもします。

 

しかし単絃楽器の表現が単純かと言えば、Tamara Volskayaの演奏をひとたび聞けば決してそんなことはないことをいやでも思い知らされます。

 

このサン・サーンスのロンド・カプリチオーソ、かなり若い頃の演奏と思われますが、緩急自在、間の取り方から装飾音符までまったく非の打ち所のないみごとな演奏です。

 

20089月の来日公演時、小さな会場で奏者からわずか数メートルしか離れていない最前列の席で聴く絶好の機会に恵まれましたが、その演奏は昔と何ら変わらず完璧で誠に素晴らしいものでした。左上CDはその時のサイン入りCDです。

 

4.2  Araceli Yustas Ruiz(バンドゥリア)

 

1990年創立のバンドゥリアアンサンブルCitaraedus Grupo de Camara (Citaraedus室内楽グループ)に所属しているバンドゥリアの名演奏家Araceli Yustas Ruizはマドリード在住。

 

スペインの民族楽器バンドゥリアは複絃6コース(12絃)を有しています。

 

彼女が演奏している上の動画は2000年にリリースされたCDTempus Fugit(ラテン語で「時は飛ぶ」-光陰矢の如しの意)の中の一曲でJuan Antonio Yustas Ruiz作曲「Reminiscencias(思い出)です。

 

 

バンドゥリアはマンドリンとギターの中間のような音色に感じます。一度聴くと耳に残って忘れられない、しっとりとした感じの名曲だと思います。

 

4.3  Nataliya Gudziy(バンドゥーラ)

 

ウクライナの民族楽器バンドゥーラはフレットレスのネック部分を備えた珍しい有棹撥絃楽器です。

カタロニア民謡の「鳥の歌」を2000年よりずっと日本で活動しているNataliya Gudziy (ナターシャ・グジー、1980-、ロシア)が歌い演奏します。

 

 

 

この曲は世界的チェリスト、パブロ・カザルスの演奏であまりにも有名です。

彼女の美しく透明で水晶の如き歌声と哀愁を帯びたバンドゥーラの可憐な響きは多くの人々を魅了しています。

 

5 さいごに

 

かけ足でマンドリン等撥弦楽器の演奏のいくつかを見てきました。どれも選りすぐりの素晴らしい演奏です。

 

日々急拡大しているYou Tubeに代表される動画投稿サイトの全容を日常的に把握することは難しく、また動画だけでなく音声だけのサイトをも含めればマンドリン関係のサイトだけでも膨大な数になるものと思われます。

 

きりがありませんので今後随時改訂することとして、ひとまずこのページを閉じて次の項目に進みたいと思います。